目次
1 はじめに
どの大学にも学部や学科の略称はある。早稲田大学キャンパスことば辞典を作成するにあたり、これらをどうするかが議論された。その結果、学部・学科の略称については語釈のみ掲載するものの、用例やなじみ度は調査しないという方針となった。
本記事では、そんな早稲田大学における学部や学科、コース等の略称をまとめていく。せっかく班員皆で集めたものなので、記事として一覧で見られたら良いのではないかという考えに至ったのである。
我々の作成するキャンパスことば辞典では、見出し語をリストアップする際、大学公式の正式名称として使われている語は不採用という方針にした。そのため、学部・学科の略称も公式で使用されていないもののみを掲載している。表記は読みをかなで、漢字がある場合は【 】内に漢字を記述している。また、調査時に使用度が低いとコメントいただいたものは( )内に記述した。
調査方法は、日本語学(国語学)研究班員の知り合いの現役早大生への聞き取りがメインとなった。そのため、調査不十分により略称がわからないものもあった。また、班員の学部比率の都合上、回答の確実性には偏りがある可能性が高い。本稿で取り扱った略称については、これらの点をご留意いただきたい。
略称において不明点があるものや情報が不十分なところには、「?」を付記している。より多くの情報をご存じの方がいらっしゃれば、ぜひX(@nihongogakuken)やメール(nihongogakuken■gmail ■を@へ)等でご連絡いただければ幸いである。もちろん、その他のコメントやご意見などもお待ちしている。
2 学部・学科略称
2-1 早稲田キャンパスの学部

2-1-1 政治経済学部→せいけい【政経】
政治学科→せいじ【政治】
経済学科→けいざい【経済】
国際政治経済学科→こくさいせいけい【国際政経】
国際政経はあまり略せていないような気もするが、4拍・4拍で収まりは良いような感覚はある。
2-1-2 法学部→ほう【法】、わせほう【早稲法】
早稲田の法学部には学科は存在しない。政治学科と法律学科で分かれる大学も多いようだが、早稲田の場合、政治は政治経済学科が担っている。そのため、ここでも学部の略称のみの掲載となった。
文学部、商学部、法学部には「わせ」が頭につく略称も見られた。これらは早稲田大学の学部であるという意識が他学部よりも強いということであろうか。たしかに「早稲田の法学部」として有名という話は小耳に挟んだことはあるが、看板学部と学生らに言われる政治経済学部には「わせ」が特に付かないことなどから、確実とは言えなさそうである。学部の設立年代やその学問分野の歴史、学部特有の文化なども関係してきそうな部分で、十分に解明することはできなかった。
2-1-3 教育学部→きょういく【教育】
教育学科
教育学専攻
教育学専修→よんきょう【四教】
生涯教育学専修→?
教育心理学専修→きょうしん【教心】
初等教育学専攻→?
国語国文学科→こくぶん【国文】、こくごこくぶん【国語国文】
英語英文学科→えいぶん【英文】
社会科
地理歴史専修→ちれき【地歴】
公共市民学専修→こうみん【公民】
理学科
生物学専修→せいせん【生専】
地球科学専修→ちかせん【地科専】
数学科→すうがく【数学】
複合文化学科→ふくぶん【複文】
下位項目のある学科については、学科の略称は記載していない。これは調査中聞くことがなかったからであるが、下位項目の略称で伝わるので、学科の略称はそもそも存在しないのではないかという見解である。生涯教育学専修と初等教育専修の略称は、所属する知り合いがおらず調査不足である。
教育学部にも「複合文化」の名を冠する部署があり、文構複文生(文化構想学部複合文化論系生)の筆者はなんとなく親近感を覚えている。
教育学部は学科や専攻が細かく分かれているのが他の学部とは大きく異なる点である。個人的には「教育学部教育学科教育学専攻教育学専修」を四教と略すのは、大変効率的で面白いと感じた。
2-1-4 商学部→しょう【商】、わせしょう【早稲商】
経営トラック→けいえい【経営】
会計トラック→かいけい【会計】
マーケティングトラック→マケトラ、マーケティング
ファイナンストラック→ファイナンス
保険・リスクマネジメントトラック→ほけん【保険】
ビジネスエコノミクストラック→エコノミクス
他学部のコース名と比べ、ややカタカナの割合が高い。ビジネスを学ぶ商学部らしさがトラック名にも現れているようだ。
2-1-5 社会科学部→しゃがく【社学】
『平和・国際協力』コース→?
『多文化社会・共生』コース→?
『サスティナビリティ』コース→?
『コミュニティ・社会デザイン』コース→?
『組織・社会イノベーション』コース→?
社会科学部は、2024年度以降の入学者にコース制度が導入された。これは2年次の秋学期から各コースに分かれた履修が始まるというものである。そのため、略称の調査を行った2025年秋~冬頃はまさにそのカリキュラムの第一期生の履修がスタートした頃であり、十分に調べることができなかった。「そもそもまだ略称ができるほど定着していないのではないか」という班員の意見もあり、今後の変化に期待が高まる項目である。
2-1-6 国際教養学部→こっきょう【国教】
シルス【SILS】という略称も非常に有名だが、こちらは大学公式サイトにも記載があるため正式名称と捉え、今回は項目立てを行わなかった。
公式のアルファベット略称は本稿の最後でも軽く紹介をしているため、そちらも参照してみてほしい。
2-2 戸山キャンパスの学部

2-2-1 文化構想学部→ぶんこう【文構】
多元文化論系→たげん【多元】
複合文化論系→ふくごう【複合】、ふくぶん【複文】
表象・メディア論系→ひょうめ【表メ】
文芸・ジャーナリズム論系→ぶんじゃ【文ジャ】
現代人間論系→げんにん【現人】
社会構築論系→しゃこう【社構】
漢字とカタカナの複合語の論系名が略されると、略称も漢字カタカナ交じりになるのは面白い点である。
2-2-2 文学部→ぶん【文】、わせぶん【早稲文】
哲学コース→てつこ【哲コ】、ぶんてつ【文哲】、てつがく【哲学】
東洋哲学コース→とうてつ【東哲】
心理学コース→しんり【心理】
社会学コース→しゃかいがく【社会学】、しゃかい【社会】
教育学コース→きょういく【教育】
日本語日本文学コース→にちぶん【日文】
中国語中国文学コース→ちゅうぶん【中文】
英文学コース→えいぶん【英文】
フランス語フランス文学コース→ふつぶん【仏文】
ドイツ語ドイツ文学コース→どくぶん【独文】※文章語、どいつご【ドイツ語】※口頭語、(どつぶん【ドツ文】、とくぶん【徳文】)
ロシア語ロシア文学コース→ろぶん【露文】
演劇映像コース→えんげき【演劇】/えいぞう【映像】 コース全体を示すものは×?
美術史コース→びじゅつし【美術史】
日本史コース→にほんし【日本史】
アジア史コース→あじあし【アジア史】
西洋史コース→せいようし【西洋史】
考古学コース→こうこ【考古】
中東・イスラーム研究コース→ちゅういす【中イス】、なかいす【中イス】
「ドツ文」は回答者もあまり聞いたことはないとのことで、現役のコース生からも「コース内では聞いたことがない、コース生ではない人が言っているのではないか」とコメントをいただいた。
演劇映像コースでは、学生は履修科目によって「自分は演劇コースだ」「映像コースだ」という認識が強く、「演劇映像」として略すというよりも、「演劇」「映像」と略すことが多いというコメントがあった。そのため、コース全体を示す略称は存在しない可能性がある。
美術史コースでは、以前早稲田の美術史コースに在籍していたという教員から「当時(1990年代)は『びし』と呼んでいた」というコメントもいただいた。今回はあくまでも現役のことばを集めるという観点から掲載はしなかったが、参考としてここに付記しておく。
2-3 西早稲田キャンパスの学部

2-3-1 基幹理工学部→きかん【基幹】
応用数理学科→おうすう【応数】
機械科学・航空宇宙学科→きこう【機航】
電子物理システム学科→でんぶつ【電物】、(でんし【電子】)
情報通信学科→じょうつう【情通】、つうしん【通信】
情報理工学科→じょうり【情理】
表現工学科→ひょうげん【表現】、(ひょうこう【表工】)
数学科→×、(すう【数】)
電子物理システム学科は、学生は「電物」、教員や書面上は「電子」と呼ぶとのことである。
数学科は基本的に略さないが、応用数理学科と比較するときのみ応数・数と区別するとのことだ。
2-3-2 創造理工学部→そうぞう【創造】
建築学科→けんちく【建築】
総合機械工学科→そうき【総機】
経営システム工学科→けいしす【経シス】
環境資源工学科→かんし【環資】
社会環境工学科→しゃこう【社工】
経営システム工学科・環境資源工学科・社会環境工学科は後部の「工学科」が共通しているものの、略称では社会環境工学科にしか「工」が入っていないのが興味深い。
2-3-3 先進理工学部→せんしん【先進】
応用化学科→おうか【応化】
電気・情報生命工学科→でんせい【電生】
物理学科→ぶつり【物理】
応用物理学科→おうぶつ【応物】
化学・生命化学科→かせい【化生】
生命医科学科→せいい【生医】
略称の多くは語頭の4文字であったり、前部要素と後部要素の頭文字から取られていたりといったパターンが多い。しかし、電気・情報生命工学科は「電情」ではなく「電生」となっている。生命の方に重点が置かれたイメージが持たれているのだろうか。
2-4 所沢キャンパスの学部

2-4-1 人間科学部→じんか【人科】
人間情報学科→じょうほう【情報】
人間環境学科→かんきょう【環境】
健康福祉学科→けんぷく【健福】
健康福祉学科の略称が「けんぶく」ではなく「けんぷく」になっているのが興味深いところである。たしかに「けんぶく」と「けんぷく」、どちらの略称が良いかと聞かれたら、なんとなく私も「けんぷく」を選びそうである。濁音減価(濁音は良くないイメージを想起させる傾向がある)の効果だろうか。
2-4-2 スポーツ科学部→すぽか【スポ科】
スポーツ科学科
スポーツ医科学コース→いかがく【医科学】
健康スポーツコース→けんすぽ【健スポ】
トレーナーコース→トレーナー
スポーツコーチングコース→コーチング
スポーツビジネスコース→ビジネス
スポーツ文化コース→ぶんか【文化】
スポーツ科学部は1学科6コースとなっている。創設時はスポーツ医科学科とスポーツ文化学科の2学科だったが、受験生の動向等を踏まえて現在の形に再編されたとのことである。
3 おまけ:公式のアルファベット略称
せっかくなので、早稲田大学公式のアルファベット略称についても紹介しておきたい。これらは学部名を英語にし、その頭文字を取ったものである。学部公式サイトなどでもロゴとして利用されている。
ちなみに、大隈講堂そばの早稲田オフィシャルグッズショップ・Uni.Shop125では、この略称を使った学部ロゴのラバーキーホルダーが売られていたりもする。

こちらも簡単にまとめておこう。
- 政治経済学部→PSE(School of Political Science and Economics)
- 法学部→LAW(School of Law)
- 文化構想学部→CMS(School of Culture, Media and Society)
- 文学部→HSS(School of Humanities and Social Sciences)
- 教育学部→EDU(School of Education)
- 商学部→SOC(School of Commerce)
- 基幹理工学部→FSE(School of Fundamental Science and Engineering)
- 創造理工学部→CSE(School of Creative Science and Engineering)
- 先進理工学部→ASE(School of Advanced Science and Engineering)
- 社会科学部→SSS(School of Social Sciences)
- 人間科学部→HUM(School of Human Sciences)
- スポーツ科学部→SPS(School of Sport Sciences)
- 国際教養学部→SILS(School of International Liberal Studies)
略し方にはいくつかパターンがありそうであるが、概ね3文字に略すのは共通なようだ。唯一、国際教養学部のみ4文字となっている。
パターンは三つほどに分類できるだろうか。一つ目は「School of」以降の名詞の頭文字を取るもので、政治経済・文化構想・文・基幹理工・創造理工・先進理工・スポーツ科学の7学部が該当する。二つ目は「School of」に続く単語の最初の3文字を取るものである。法・教育・人間科学が該当する。三つ目は「School of」も含めて略称としているもので、商・社会科学・国際教養が該当する。
これらの分類の中でも、最も特徴的な語から2文字取るスポーツ科学部や、ofを略称に含めるパターン(商)と含めないパターン(三つ目のそれ以外)など、微妙に例外がある。 統一ルールは3文字程度ということ以外ほぼ無く、各学部が自由に略称を設定しているのかもしれない。
4 おわりに
いざ調べてみると、早稲田の学部や学科は非常に多種多様であることを身をもって実感することができた。学部ごとに特色があり、非常に興味深い結果である。これは2025年秋~冬時点の結果であるが、今後どのように変化していくのかにも着目していきたい。
また、多くの略称は4拍で構成されていた。これは学部学科に限らず日本語の一般名詞にも見られるもので、例えばパーソナルコンピュータ→パソコンなどが挙げられる。日本語はこの拍に収まりの良さが感じられる言語なのかもしれない。
最後に、略称の調査に協力してくださった班員の友人・サークルの先輩後輩・クラスメイト・コース室の方々といった関係各位への感謝をもって、この記事を締めくくらせていただく。
渡部心香



























